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2006年11月に作成された記事

2006年11月29日 (水)

デンオンのクラシック録音

デンオンのクラシック録音は基本的に4ch録音ですが、このため後でトラブルが生じます。デンオンでは1CDを制作する際、音に関しては、録音エンジニア、編集エンジニア、マスタリングエンジニアの3人のエンジニアの手を通してマスター音源が出来上がります。その過程でいろいろ、また人間関係においても面倒な事が起こります。録音エンジニアは録音現場で自分が良いと思った音とチャンネルバランスを決めます。編集エンジニアはそのバランスでモニターしながら編集しますが、そこで改めてスタジオで聴いてみると「え・・・そんな・・・うそーーー何これは?」ということに大抵なります。そこで録音エンジニアを呼んで「ちょっと聴いてよ。」と言いますと、録音エンジニアはいろいろ言い訳しながらその音を聴いて「いやー違う、このバランスでやってよ。今忙しいから後は任せる」と言ってその場をごまかして逃げてしまいます。編集エンジニアは新たなバランスで「何を聴いていたんでしょうかね。」と思いながら、録音エンジニアが聴き逃したノイズを取ったりします。またディレクターが制作した編集スコア通りにテイクをつなぎますが、必ずしもその通りにはつながるとは限りません。しかし「他にテイクが無いから何とかしてつないでよ。」と言われ、つながらないテイクを無理やりつないだりして何とか格好つけます。最後はマスタリングです。ここで最終のチャンネルバランスと音質調整が行われますが、ほとんど当初録音エンジニアが決めた音バランスとは違うバランスになります。全く異なる音になることもあります。そうやって最終のマスターの音が出来上がります。ついでに紹介しますが当時デンオンには保坂氏という伝説的なマスタリングエンジニアが居ました。そうやってCDの音が出来るのですが、CDが市場に発売され録音評が出てオーディオ評論家に優秀録音盤として取り上げられると決まって評価されるのは録音エンジニアなのです。曰く「彼の作り出すサウンドは素晴らしい」と。同じ会社の一員なので表面上は黙っていますが、編集エンジニアやマスタリングエンジニアにとっては面白くありません、俺たちが上手く修正したから評価されたのだという自負があり、録音エンジニアの尻拭いをさせらているという不満がいつも貯まっていたのは事実です。職場ではそのような空気がありました。従って一般の人はデンオンのCDを聴いて録音現場でもそのような音がしているのだと思うでしょうが実は大間違いなのです。録音した音はあくまでも素材であって、編集とマスタリング工程で整形、修正、補正、化粧され作り上げられます。デンオンのCDの音は録音エンジニアだけの仕業ではなく、その他多くのエンジニア、ディレクターの努力が結集された結果なのです。そういう裏方さんもいることを覚えていただくと嬉しいです。

そこで私ですが、私は何故か社内で特別浮いた存在で、録音と編集エンジニアの両方を兼ね、さらに自分が録音したものについては必ずマスタリング時に立会いして音決めに参加していました。こんな会社の従来の概念を超えたエンジニアでしたので、影でいろいろ言われました。ええ、当然査定も最低でした。

ハーブクラシックスでは私が音に関しては全責任を持って作っていますので安心して聴いてください。

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2006年11月26日 (日)

ピアノ録音

ピアノの録音についてお話します。デンオンのクラシックのピアノ録音は1980年代から今日に至るまでほとんど同じ録音方式を採用しています。基本的に、メインマイクにB&K(現DPA)4006、アシスタントマイクにショップスCMCシリーズという組み合わせで4ch録音されています。私の手元には過去15年分のデンオン国内外のクラシック録音の録音テ゜ータがありますが、これ以外の組み合わせはとしては、メインにB&K4003、ショップスの無指向、アースワークスのQCT-1、イェックリンシャイベ(これとてB&K4006)、アシスタントにB&K4006、同4011、ショップスMSTC-5、CMC62H、ノイマンU-87位でしょうか。メインにAKG、ノイマン系は皆無です。もちろんいろいろなマイクを現場に持ち込んでは組み合わせを変えて試聴するのですが、結局のところこの組み合わせに落ち着きます。デンオンの録音エンジニアの耳はこの組み合わせの音に固定されてしまったかのような感じさえします。そしてそれらの音はその後4chで編集が行われ、マスタリングエンジニアによりミックスされ2chステレオとなります。

それでは今回の小林功、佐々木秋子の録音は? 私はデンオンの録音エンジニアでしたからもうお判りですね。

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2006年11月24日 (金)

クラシック音楽のデジタル編集

クラシック音楽のデジタル編集のお話の続きです。1CDで約200~300箇所の編集というと1分に平均4or5箇所となります。クラシック音楽のセッション録音では同一曲を何回も繰り返し演奏して多くのテイクを録音してそのうちの一番良いと思われるテイクを継ぎはぎして一曲に作り上げます。PCベースの編集機の登場で1サンプルまでも限りなく正確につなぐことができるようになりました。そのため作品の完成度を上げようとするとどうしても編集点の数が増えてしまいます。しかし物理的に音としてつながったとしても、音楽的につながっているとは限りません。異なるテイクをつなぎ合わせても全体を通じて音楽が自然に流れるようにしなければいけないところに編集技術の難しさがあります。これはいろいろな音楽の編集を経験するしかありませんが、最後は編集者のセンスに依存します。CDを聴いていてたまに編集点に気付くことがありますがこれは×です。ばれないようにつなげなければいけません。

編集点の数が多いアーティストは大きく二つに分かれます。

1)演奏技術が未熟か、衰えているタイプ。スコア通りにちゃんと弾けないので、何度もテイクを重ねてそのうち弾けたところだけを集めて編集して曲を完成するのです。よくCDでは完璧な演奏をしていて期待してコンサートに行ってみたらボロボロだったという声を聞きますが、それにあたります。

2)常に完璧な演奏を求めるタイプ。CDとして自身の演奏が後世に残るため少しのミスや妥協も許せないアーティストです。編集にもいろいろ要求されます。この場合本人が満足するまで言われた通りに編集するしかありません。立会い編集で精神的にえらく疲れたことがあります。

編集を依頼される曲はこちらでは選べることはできません、たとえ嫌いな曲としてもです。逆に好きな曲ではというと、一日中朝から晩まで一週間毎日毎日同じ曲を精神集中して聴くわけですから、たとえモーツァルトでもさすがにその後しばらくモーツァルトはお腹一杯ということになります。こんなとき私は気分転換にボサノバを聴いたりします。

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クラシック音楽のデジタル編集

今日は朝から晩まで一日中、8&9月に録音した小林功と佐々木秋子の録音のデジタル編集をやっていました。それは編集スコアが送ってきたからです。もっとも途中でサッカーのTV中継も見ていましたが。小林功は本人のテイクセレクションで1st Edit ですが、大部分がテイクワンOKでややこしい編集ポイントはほとんど無かったので、スムーズに終えました。佐々木秋子の方は3rd Edit でまだ細かいところが残りました。しかし昔やった編集ではCD一枚で約200~300箇所ほどの編集ポイントがあることもざらでした。冗談で「録音三日、編集一週間」と言っていたものです。それに比べたらずっと楽でした。クラシック音楽の制作では編集作業抜きでは考えられません。ライヴ録音といえども何かしら編集の手が入っているのが普通です。最近カメラータ・トウキョウの井坂さんが『一枚のディスクに-レコードプロデューサーの仕事-』春秋社という本を出版したので読んでいただくと制作サイドの考え方がわかるのではないかと思います

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2006年11月22日 (水)

デンオンPCM録音機のお話その3

デンオンPCM録音機のお話その3です。NAGRA-DとデンオンPCM録音機DN-039Rをパラ回ししている写真がありましたので紹介します。録音場所はザルツブルグのモーツァルテウム音楽院大ホールで、録音曲目はボリス・ベルキンによるモーツァルトの協奏交響曲でした。机の上がNAGRA-Dで箱に乗っているのが下からDN-039Rプロセッサー、4ch分の自社開発20ビットA/D、D/Aコンバーターです。更にその上はTCジェネレーターとDATです。VTRは残念ながら写っていません。録音の合間にザルツブルグの市内観光をしましたが、2月だったのでとても寒かった記憶があります。 なお写真に写っている人物は私です。

File0002File0003File0004

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2006年11月21日 (火)

デンオンPCM録音機のお話その2

デンオンPCM録音機のお話その2です。

録音現場での実際の写真がありますので紹介します。これは1999年のアファナシエフのショパンのノクターンの録音現場です。卓の左側にあるのが、NAGRA-Dという4ch,20ビットの録音機ですが、この時は96KHz24ビット2ch録音機として使っています。A/Dはdcsです。その左にあるのが、ソニーより早く開発したデンオン自社開発の2ch,1ビットΣΔ(いわゆるDSD)録音機です。記録機としTASCAM DA-88を使用しています。File0001_2 

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2006年11月20日 (月)

デンオンPCM録音機のお話

デンオンPCM録音機のお話をしましょう。デンオンではクラシックの録音は基本的にすべて4chです、これは1972年に開発したPCM録音1号機からその流れから最近まで続いています。私は1985年にPCM-039Rという4ch,16ビット,Fs=44.1Khzで記録メディアはUマチックVTRの録音機を開発しました。それまではFs=44.056KHzで、CD時代になったために新たに開発し現場導入され1994年まで使われました。1993年に20ビットの改良型を開発しましたが、基本的に自社開発はここまでで、1995年からはNAGRA-Dという4ch,20ビットの録音機になり2002年まで使われ、その後はTASCAM DA-78HRとなりました。1999年頃実験的に2chのDSD録音機を開発し1ビットΣΔ録音として制作されたCDもありましたが、S/Nが悪かったのと、DSD信号上で編集ができないので、次第に使われなくなりました。制作されたCDはすべて96KHz24ビットにアナログ戻しで編集され、再度マスタリングでCDフォーマットの44.1KHZ16ビットにアナログ戻しで変換されています。今年2006年SACD制作用にピラミックス・システムを導入しています。

それからその4chをどのように使っていたかというと初期のPCM録音ではch1,2に2chステレオミックスをch3,4に残響マイクの音を入れていましたが、残響の音は良い音が録れないし使えない、よっぽどエコーマシンの方が自由度が高くてよいということで、その後すぐch1,2はメインマイクのみの音、ch3,4はその他のマイクミックスの音を録音することになりました。ただソリストが居る場合ch3,4はソロチャンネルとなります。音響条件が異なる録音現場で2chステレオミックスを作るということはエンジニアにとってはすごくプレッシャーのかかることで、音源を持ち帰ってから音のバランスを変えられるということで、大変有利でした。その頃他社はDATによる2ch録音がほとんどでした。これがデンオンレーベルの音の良さの秘密の一つです。ついでにch1,2のみを使ってワンポイント録音と称したCDも発売しました。

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2006年11月19日 (日)

合唱団の録音

昨日18日に行った慶応義塾ワグネル・ソサィエティーOB合唱団の定期演奏会の録音についてです。会場は大井町のきゅりあん大ホールでした。今回はクライアントから三点吊りのみのワンポイントステレオ録音でお願いしますということだったので、メインマイクB&K4006によるデンオン・ワンポイント録音となりました。写真はハーブ・クラシックスの村田プロデューサーがトモカ電気のステレオ・バーにマイクをセッティングしている様子です。マイクの間隔はカプセル間52cm、後ろ39cmでした。三点吊りの位置は音を聴きながら移動させて、ピアノの音が抑えられかつ合唱がクリアになる位置を探し、最終的にステージ側いっぱいで高さはステージ上376cmのところになりました。録音機材は写真の通りで、デンオンPCM&DSD録音となりました。デンオンPCM録音機の移り変わりについては次の機会に紹介します。Img_0367 Img_0369 Img_0371

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2006年11月16日 (木)

合唱団の録音

18日に合唱の録音があるので、今日は機材のチェックをやっていました。今回はクライアントより「三点吊りワンポイント録音でお願いします。」いうことなので、録音機としていつものTASCAM DA-78HRに加えてDV-RA1000を使用してDSD録音もやってみるつもりです。どんな音が録音されるか楽しみです。

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2006年11月15日 (水)

吹奏楽団の録音

多摩川吹奏楽団 の録音のその4です。先週CDが楽団に納品され、団員に頒布されました。このCDを聴いたYさん(私の後輩で自ら吹奏楽の演奏と録音をなさっている)から質問がきましたので、ここで紹介方々お答えします。

Q1:やや金管が勝ったバランスのように感じます。これはバンド自体のバランスがそうだったのでしょうか?

A1:金管が大きいのは常任指揮者の要望です。奥に引っ込んでいるので出してくれとのことで、クライアントの求める音を作るのもエンジニアの仕事です。

Q2:「メインマイクを下げられない」というのは、思った位置に下げられなかったということでしょうか?

A2:メインマイクの高さは重要です。今回はライヴ録音でかつDVD制作業者も入っていてカメラ目線に入らないよう考慮しました。また二階席の聴衆の目線にも入らないよう、更に照明ライトによりバックの反響版にマイクの影が写らないよう高めに設定しました。マルチ録音なので音は後でバランスを取り直すことができます。この話になると前にNHKの録音エンジニアのことを思い出しました。三点吊りマイクの位置はいつもTVカメラマンの指示により決められてしまうと嘆いていました。たしかに番組を見る画面上目立たない絶妙の位置にセットされています。アマチュアの方は参考にしない方が良いでしょう。もし今回普通のセッション録音なら指揮者の頭上でステージ床から2~4mのところにセットします。なおDVD制作業者にはメインマイクのみをパラ分けして送っています。また書きます。

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2006年11月 5日 (日)

吹奏楽団の録音

多摩川吹奏楽団 の録音のその3です。3rdマスタリングを聴いてもらってからのコメントが来ました。1,2曲目について、Tpを少し上げて、Tbを少し下げて、他の曲はOKとのことで、後はお任せマスタリングで完パケを上げてくださいとのことでした。ところで演奏会のTp、Tbの配置は写真のようにTp、Tbそれぞれ集団となって無く、上下2段で横に並んでいます。これらに対してやはり横並びで2本のアシスタントマイクを立てています。ということはTp、Tbの音はすでに空間でミックスされてアシスタントマイクに録られることになります。一方Hrの場合はグループ状に座っているところにマイクを立てているので、Hr単独での音量調節は可能です。こうなってはTp、Tb各楽器の音を分離することは難しいことになります。しかしそこはクライアントの要請なので、できるだけのことはしなければなりません。でもこの程度の要請は普通です、すごいのになるとすでにミックスされている音の中から特定の楽器の音だけを消してくれといわれたこともあります。録音技術で何でも出来ると思っている方がいられるみたいですけど。出来ないこともあるのです。それはともかく結局他のマイクとのバランスを少し変えることと、Tp、Tbそれぞれがが単独で演奏している部分について音量レベルを上げ下げすることにより全体的にTpが出て、Tbが抑えられた感じがでるようにマスタリングのやり直しです。今回はこの4thマスタリングで終了です。あとはプレスマスターCDとPQシートおよびレーベル・デザイン・データをつくってCDプレス会社に発注すれば一週間くらいでライヴCDの完成です。来週末にはクライアントに届けられるでしょう。このCDの入手希望の方は直接多摩川吹奏楽団 に申し込んでください。よろしくおねがいします。

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